愛しているので離婚してください~御曹司は政略妻への情欲を鎮められない~
 次の日からは中山道の旅の準備だけで十分楽しめた。
 いいのかしらと疑問は沸くものの意外と楽しいひと月になりそうで、多分これは修学旅行のようなもの。

 私と綾星さんの結婚を卒業するための楽しい旅になるだろう。

「ところで星光、俺が渡してある通帳からは一切使ってないようだけど、生活費はどうしているんだ?」

「えっと、自分のお金です」

「お義父さんに迷惑はかけられないから」

「いえいえ、父にも関係なく自分のお金なので」

 綾星さんは首を傾げる。

「株とか仮装通貨とか先物取引でちょっと」

「え?」

「あ、でも今はやめましたよ? 残っているのは積立投信と外貨預金だけで。必要なだけは貯金できましたし」

 おかげで無事一生遊んで暮らしていけるだけの預金はできた。
 それも離婚を申し出た理由のひとつだし。

「――そうなのか」

「はい。一時スクールに通って、貯めていたお小遣いを元にデイトレーダー的なことをして」

 綾星さんは目を丸くする。
 そんなに驚かなくてもいいのに。

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