愛しているので離婚してください~御曹司は政略妻への情欲を鎮められない~
 離婚の原因などは聞いていないが、今でもあんな風に花菱家と関わっているところをみると円満な離婚だったのだろう。

 星光の両親は離婚が善悪では語れない見本のような元夫婦に見える。

 彼女が淡々と離婚を要求するのも、両親の影響があるのだろうか。
 自立しているのも母の影響かもしれない。

『残っているのは積立投信と外貨預金だけで。必要なだけは貯金できましたし』

 すごいな。実家が裕福なのに頼ろうともせず、スクールに通って勉強してまでしっかりと財テクしていたとは。

 君って人は知れば知るほど底が知れないな、星光。

 もし俺が離婚に反対しなければ、彼女は自由にどこかへ羽ばたいていくのだろう。
 俺を責めるわけでもなく、思い出に変えて。いや、そうなれば跡形もなく忘れられるんだろう、俺は。

「ん? どうした?」

「いやー、星光がさぁ、本当に凄いんだよ。俺、どうして今まで気づかなかったんだろってね」

「灯台下暗し、ってな。お前の場合見ようとしなかっ……」

 慌てたように口を覆った透は、あははと笑ってごまかす。

「別にいいよ。その通りだからな。だけど俺は絶対に取り戻すぞ、この三年で開いた溝を強固に埋めてやる」

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