愛しているので離婚してください～御曹司は政略妻への情欲を鎮められない～

「がんばれがんばれ、その意気だ。しかし、なんだかんだで星光さんが好きだったんだなぁお前は」
　しみじみと透がそう言った。

「そういう簡単なことじゃないんだよ」

「じゃあなんなんだよ」

　問題はそこだ。

　星光にもどうして離婚したくないのかと聞かれるが、その度に俺は答えに詰まる。
　好きだからとか愛しているからとか、口先だけでならいくらでも言えるが、適当に返したくない。

　というか今更それを言ったところで、とても信じてもらえないだろう。
　この三年間の俺は、自慢じゃないが愛情の欠片も見せていないのだから。

「正直言うと、なんでなのか俺にもわからん。だけど気が付いたら追いかけていた」

「追いかけて？」

「ああ、星光が乗ったタクシーをな」

「まじか」

「ああ。全力でな、追いつかなかったけど」

　そりゃそうだろうと透は呆れる。

「妻に逃げられて走って追いかける夫って、どうなんだそれ。ヤバくないか？」