愛しているので離婚してください~御曹司は政略妻への情欲を鎮められない~
「ヤバかろうがなんだろうが、俺は簡単に離婚なんかしない。決めたんだ。俺は星光を離さない」

「えっ……」と、透が完全に引いたところで内線電話が鳴った。

 電話は秘書課の社員からで、スピーカーにすると『五月さんからです』と言う。

 俺と透は顔を見合わせた。

 五月は体調不良という理由で、退職届を出した翌日から休暇に入っていた。

 騒ぎ立てて自身の過去が暴かれるほうが損だと思ったのかもしれない。かといって退職日まで普通に出勤する気にはなれなかったのか。とにかく静かに身を引いたような状況だ。

 スピーカーにしたまま電話に出た。

「はい」

『お久しぶりです専務。お願いがあるんですけど、私このまま出勤しなくてもいいですか? 私物は持ち帰ってあるんで』

「わかった。経理上の手続きで連絡はあると思うが」
『じゃあ、そうさせていただきますねー』

「ああ」

『そうそう、この前偶然奥さまに会いましたよぉ、ご存じですかぁ?』

「妻と君は全く関係ない。報告の必要もない」
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