愛しているので離婚してください~御曹司は政略妻への情欲を鎮められない~
「大きな岩に座って、釣れても釣れなくても別にいいんだ。お湯を沸かしてカップ麺なんか食べると、すっごくうまくてね。パーコレーターでコーヒーを淹れて」

「パーコレーター?」

「コーヒー用のポットだよ。ミルでガリガリとコーヒーを挽いて、パーコレーターに入れて沸かすんだ」

 へぇ。なんだかとってもおいしそう。
 むくむくと興味が湧いてくる。渓流釣りにも岩の上で食べるカップ麺やコーヒーにも。

 憧れのキャンプも綾星さんに言っておけば、もしかしたら喜んで連れて行ってくれたのかもしれない。
 スーツ姿の彼しか知らないから、アウトドア好きだなんて想像もできなかった。

「社会人になってからは余裕がなくて全然行ってないけど。俺はもともとこういうアウトドアな旅が好きなんだ。星光は?」

「私はどんなところでも見て歩いて、おいしいものを見つけて、それだけで満足です」

「たとえば? 最近はどこに行ったの?」

 えっと……それは、なんとなく気まずいけれど。

「仙台とか北海道とか、京都とか」
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