愛しているので離婚してください~御曹司は政略妻への情欲を鎮められない~
「ひとつ聞いてもいい? 私が綾星さんと離婚することと美々子はどう関係があるの?」

「うーん。それはヒミツ」

 くすくすと笑って唇を尖らせる美々子は、見た目も仕草も幼い。私と同じ二十八歳なのだけれど、彼女の時計の針は十九歳くらいで止まったのだろう。

「離婚届にサインして綾星さんに渡してあるの」

「ええー。それだけじゃあ困るわぁ。ちゃんと届を提出してくれないと」

「私ができるのはここまでよ。あとは知らないわ。あなたが好きにしたらいいじゃない」

「えー、そんなこと言っていいのぉ?」

 彼女は大袈裟に肩を上げて両手を広げる。

「別にいいわよ。写真なら好きにしたら?」

「わかったぁ。じゃあ、早速そうする」

「だけど美々子、氷室さんには今回のことを報告しておくわね」

 不愉快そうに眉をひそめた彼女は、席を立った。

 ――早速か。なにをどうするのだろう。
 綾星さんに、あの写真を見せるのかしら?

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