愛しているので離婚してください~御曹司は政略妻への情欲を鎮められない~
「ふん。バカみたい。氷室さんのおさがりで満足なの?」

「美々子。今後も星光を侮辱するようなら正式に訴える。金輪際、俺と星光の前に現れるな」

「やってみなさいよっ!」

「み、美々子……。や、やめなさい」
 伯父が慌てだした。

「ねえ綾星お兄ちゃん、かわいいって言ってくれたじゃない、私のこと」

 泣いたり叫んだり、次は甘えたりか。

 美々子はずっと、こうして我を通して来た。いつまでも子供のまま成長もせずに。

 あと二年で三十歳だろう?

 うんざりしながら、俺の腕にしがみつく美々子の手を、どうやって振り解こうか考えた。

 手首を掴めば痛いと騒ぐだろう。強く腕を振れば倒れ込むだろう。かといって、これ以上きつい言葉も言いたくない。

 飛翔さんが『相変わらず甘いな』と、どこかで笑っているような気がした。

「離してくれないか」

「いやよ!」

「美々子、もういいから、な、落ち着いて」

 焦ったように、伯父が立ち上がる。

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