愛しているので離婚してください~御曹司は政略妻への情欲を鎮められない~
「私はずっと、ずっと好きだったのにっ! 星光なんかよりずっと綾星お兄ちゃんを大切にできるのにっ!」

 見るに耐えかねたんだろう。伯母も立ち上がる。
「美々子、もうやめなさい」

 両親に両脇を抱えられながら美々子は号泣しながら崩れ落ちた。

「失礼します」

「あっ、綾星。済まなかったな」
 追いかける伯父の声に、済まなかったなじゃ、済まねぇよと心で言い捨て個室から出た。


 するとそこに、透がいた。

「来てくれたのか」

「ああやっぱり気になって。大丈夫か? 様子を見て連れ出そうと思ったんだが……」

 タイミングが計れなかったのだろう。

「ありがとう。ここにいてくれただけで助かったよ。他人に聞かれたくない醜聞だからな」

 扉の奥から、美々子の泣き声が漏れてくる。

「心配ない。誰も近づけないようにしていたから」
 さすが信頼できる秘書だ。
「ありがとう」
 透の肩を軽く叩く。

 安心したせいか、一気に疲れが出た。

 俺も透も何も食べていない。
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