愛しているので離婚してください~御曹司は政略妻への情欲を鎮められない~
 社へ戻る途中、目に留まった蕎麦屋に入って軽く昼食を済ませた。

「美々子さん、やっぱりそうだったんだなぁ。お前の結婚式で泣いてたのはそういうわけか」

 伯父が問題を起こして間もなくの結婚だったから、式にも披露宴にも伯父伯母は欠席だった。

 ただ、美々子だけは他の親族に混じって出席していた。

「あの涙は、伯父が起こした問題で泣いていると思ってたよ俺は」

 泣いてるのは俺も気づいていたが、まさか。

「さっきのあの様子じゃ違うだろうな」
 俺も透の意見に頷くしかない。
 美々子は本気で、俺と結婚するつもりでいたのだろう。

「大変だなぁお前も。五月心羽の次は美々子さんか。地雷女に挟まれていたとはな」

 透はため息をつく。
 いや、ため息をつきたいのは俺だし。

「大学三年の時か。お前を取り合って、ゼミの女の子が殴り合いの喧嘩になったこともあったよな」
「そういえば、あれもなんだったんだ。訳わかんねーし」

「お好み焼き屋のバイトも凄かったよな。何十枚も食べきれないほど注文してくる子とか」

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