愛しているので離婚してください~御曹司は政略妻への情欲を鎮められない~
「五條の名前だろ。どうせ一文無しなら無視だろうに、なんだと思ってんだ俺を。ったくどいつもこいつもふざけやがって」

 だから女は嫌なんだと言いたくなる。女に限らず権力に寄ってくるのは男もだが。

 星光以外の女はまったく信用できないと思ったところで、ふと気づく。

 ――あ。俺も花菱の権力にすがった点では同じ穴の狢か。

 星光はどうだったんだろう。

 寄ってくる男は多かったに違いない。実際パーティーともなれば彼女の周りには誰かしら男がいた。

 俺も所詮はそのひとり。なのに敬意を払うどころか、上から目線でしか彼女を見なかった。

 親が決めた政略結婚で、取るに立らない男に冷たくされて、彼女はどんなに嫌な思いをしていたか……。

「なんだかんだ優しいからなぁ、お前は」

「いや、俺は本当にバカだよ。肝心なところで真実を見る目もなかった」

 星光に捨てられても当然なんだ。

 ごめんな、星光。

『あやまってばかりですね』

 優しい彼女は、くすくす笑うだけで、俺を罵ったりしない。

 彼女の気持ちはわからない。

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