愛しているので離婚してください~御曹司は政略妻への情欲を鎮められない~
 精一杯愛おしんで抱いているうちは、体は答えてくれるがそれだけだ。どんなに好きだと言っても、言葉で好きだとは返してくれない。

 むしろ同情されているようにも思う。

『大丈夫よ、きっと素敵な女性が愛してくれるから』

 励ますように俺の頬を両手で包み、微笑むだけだ。

 氷室仁。星光の初恋の相手。
 あいつには違うのか?

 五月も美々子も最後は氷室仁の名前を出した。星光の兄もしかり。次は氷室と結婚させるとまで言った。

 前もって聞いてはいたが、正直、あの写真はショックだった。

『最近、誰かに写真を撮られているような、気がするんです』

 彼女が男と会話をすると感じるのだという。

『え? 俺じゃないぞ?』

『あなたじゃないのはわかっています。私を脅迫する分には全く問題ありませんが、もし、あなたが私の写真をネタに脅迫された時は、心配ないので安心してください』

 そう言って、可能性のある状況を説明してくれた。エプロンを付けていれば料理教室。店の前で立ち話をしているなら、京都のおばんざい店。

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