愛しているので離婚してください~御曹司は政略妻への情欲を鎮められない~
『氷室仁さんに頼んだ、いかにも疑わしい写真が出てくると思います』

 詳しくは聞かなかった。
 聞く必要もない。

 木曽路の旅館で星光を抱いたあの日が、俺たちの初夜になった。

 星光は俺が初めての男だった。

 男遊びが激しいと美々子から聞かされていた全て、噂は嘘だったんだ。

 氷室仁との関係を疑う余地なんて微塵もない。むしろどうでもよかったのである。

 だからノーガードで写真を見た。

 まさかのお姫さまだっこに気が動転して、俺としたことがいつの写真かと聞いてしまったが、あそこまでする必要はあったのか?

 お姫さまだっこは夫だけの特権だろ。星光がお姫さまだっこって頼んだのか? それともあいつのアレンジなのか?
 ったく。

「綾星」
「ん?」

「その……。氷室と星光さんは、なんでもないんだろ?」
「ああ。写真は星光が仕掛けた罠だ」

 少し心配そうにしていた透は、破顔一笑の表情になる。

「すげーな。罠か、なるほど」

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