愛しているので離婚してください~御曹司は政略妻への情欲を鎮められない~
 私の離婚と美々子の脅迫は関係ないし、五月心羽が現れなくても美々子に脅されなくても、私は綾星さんとの離婚を決意したのだから。

「あとは何て?」
「えっと、離婚届を綾星さんに渡したとは言いましたけれど」

「えっ、言ったのか」
「あ、はい。すみません」
 って、え。なんで謝っているの私。

「いや、いいんだ。星光は何も悪くない。かわいそうに」

 かわいそう?

 綾星さんは心配で堪らないというふうに私を見つめて抱きしめる。

「もう大丈夫だからな、星光」

 だから、大丈夫なんですってば。

 終始私に優しいまま。
 伯父さまに一体何を言われたのか、結局教えてもらえなかった。


「いってらっしゃい」
「先に休んでいてくれていいからね」

「はい」

 言われなくたっていつもそうしているけれど。と思いつつ、にっこりと微笑む。

 綾星さんは切なそうに眉尻を下げる。

「行きたくないなぁ」

「お仕事溜まっているんでしょう?」

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