愛しているので離婚してください~御曹司は政略妻への情欲を鎮められない~
「あはは、自分でもわからなくなりそうだ」

 私と氷室さんはカウンターに座った。

「大丈夫か?」

「はい。おかげさまで。彼女が犯人だとわかってよかったです」

「そうだよな、まずはよかったなぁ。相手がわからないのは不安だし」

 さすが氷室さんはわかっている。
 何が不安って、誰だかわからないのが一番の不安だったのだから。

「ホッとしました」

 よかったよかったと、氷室さんは微笑むけれど、それでは済まない。

「すみませんでした。今更ですけれど、氷室さんに迷惑をかけたらどうしようと思って」

「気にするなよ。俺だってさんざん飛翔さんにお世話になってるんだ。星光と噂になったとしても光栄なだけだ」

 クスッと笑いながら、私は心で苦笑する。

 氷室さんは必ず兄の名前を出す。それが以前は悲しかった。

 でも今は違う。そんな彼だからこそ安心して何でも話せる。

「氷室さん。どうしたら本音がわかるんでしょうね」

 綾星さんの気持ちも、どうしたら信じられるんだろう。

「信じたいように信じればいいじゃないか」

「本音がどうであれ、ってことですか?」

 氷室さんは微笑む。

「探ってばっかりじゃ、大事なものを見失うぞ」

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