愛しているので離婚してください~御曹司は政略妻への情欲を鎮められない~
星光と約束したひと月は、残すところ一週間を切った。
今は当然のように同じベッドで眠る。
彼女が俺の部屋に来てはくれないから、俺が彼女のベッドに潜り込むだけだが。
俺にできる全てはしたつもりだ。
毎日愛を語り、行動でも表した。三年の空白を埋めるだけの溢れる愛情を注ぎ込みもした。
それ以外に何ができる。他にも手段があるならばなんだってやりたいが他に何がある?
星光は時々、遠くを見るような目をする。
儚く消えてしまいそうで、不安をかき立てられる俺は彼女を抱きしめる。
それしかできないから。
『頼む、ずっとここにいてくれ』
答えは返ってこない。
星光は薄く微笑むだけだ。
移動中の車から歩道を見れば、老夫婦が楽しそうに話をしながら腕を組み歩いている。あんなふうに穏やかで優しい未来は、俺たちにはないのか?
「はぁ」
思いの外大きなため息になってしまったらしい。書類に目を落としていた透が振り向いた。