愛しているので離婚してください~御曹司は政略妻への情欲を鎮められない~

 今の綾星さんは、雰囲気に流されているのだと思う。なんとかして離婚を避けたい一心で、その感情を愛情と勘違いしているだけだ。

 そうよ。いきなり離婚だと気持ちが受け入れられないかもしれないけれど、別居してみれば少しずつ彼も心の準備ができる。

 私ももう一度、ひとりになって冷静に考えてみたい。
 流されているのは彼だけじゃなく私も同じ、頭を冷やさなければ。


 今夜のメニューはビーフストロガノフ。

 明日綾星さんが困らないように多めに作った。温め直すくらいは自分でできるだろう。

 おいしいと連呼しながら彼はきれいに平らげた。お代わりを聞こうかとおもったけれど、今夜はケーキがあるので止めておく。

 甘いものでも食べながら別居の話をさらりと片付けてしまいたい。

「コーヒーをいれますね。チーズケーキを買ってきたんです」
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