愛しているので離婚してください~御曹司は政略妻への情欲を鎮められない~
 食事が終わり、テーブルを拭きながら「そろそろ……」と、話を切り出した。

 でも、なんとなく気まずくて彼と目を合わせるのを避けてしまった。

「約束のひと月になったので、今後のお話しをしながらリビングで食べましょう」

 彼の返事がない。

 なんだかとっても緊張する。

「コーヒーは俺がいれるよ」
 声の響きが沈んでいる。

「そうですか。それじゃお願いします」

 冷蔵庫で冷えているケーキをトレイに載せて、ひと足早く私はリビングに向かった。

 とても酷い発言をするような気分である。

 でもこのまま、なし崩し的に離婚を取り消したのでは後悔すると思う。
 お互いに一度冷静になって考える時間は必要だし、絶対に無駄にはならないはず。綾星さんのためにも。


 マグカップをふたつ持った綾星さんが、L字型のソファーのはす向かいに座る。

「これから書斎でまたお仕事ですか?」
「うん。少しだけ」

 早速口に含んだチーズケーキは、甘さよりも酸味が胸に染みる。

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