愛しているので離婚してください~御曹司は政略妻への情欲を鎮められない~
「私、まだすっきりした気持ちになれないんです。この気持ちが消えるまで別居させてもらってもいいですか?」

「別居?」
 綾星さんの眉がピクリと動いた。

「そんな中途半端はだめだというなら」
「譲歩してくれたんだね」
 言葉を遮るように綾星さんはそう言って微笑んだ。

 でもなんだか悲しそうで、胸が痛い。

「別居しても、パーティとか私が必要な時は協力しますから」

「ありがとう……」

 綾瀬さんは身を乗り出して私の肩を抱く。

「パーティが毎日あればいいのに」

 もう、またそんな。

「あなたはクールさが魅力なのに、それじゃ甘えん坊みたいですよ?」

「クールだから捨てるくせに」

 ぎゅうぎゅう抱きつかれてしまいにソファーに倒れ込んだ。

「毎日君のマンションに行ってやる」

「それじゃ別居じゃにならないでしょ」

 住所が別なら別居だと言って、彼はキスをする。

 この場で抵抗さえできれば別居の必要なんてないのに、流されてしまう私は何をやっているんだろう。

 だけど、一歩は踏み出す。
 牛歩ではあっても別居へと一コマ進み、離婚というゴールに近づく。


 次の日、私は荷物を持ってマンションを出た。
 自分の気持ちを整理するために。

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