愛しているので離婚してください~御曹司は政略妻への情欲を鎮められない~
打合せから帰る車の中、スマートホンを手に取った。
時刻は十一時。星光のGPSに動きはあるか。
位置を示す赤い点はマンションから少しずつ離れていく。彼女の新しい住まいに向かっていくのかもしれない。
やっぱり出ていくのか……。
「さて、打合せが早く終わったところで、先に飯にして午後の会議に備えますか」
腕時計に目を落とす透に「ああ、そうだな」と返事をしたところで、SNSが入った。
美々子を見張っているボディーガードからの通知だ。
【車で移動中です。行き先はマンションかもしれません。奥さま付きの係員には連絡済です】
ハッとして考える前に運転手にマンションへ向かうよう告げた。
「すまない。急いでくれ」
「どうかしたのか?」
「嫌な予感がするんだ」
美々子に新しい星光の住まいを知られるわけにはいかない。いくらセキュリティーが厳しくても入り込む隙はあるだろう。
当たらなくていいのにこういう予感に限って的中する。
俺が車を降りて通りの反対側の路地を歩く星光が見えた時、星光の後方にタクシーがとまり美々子が降りてきたところだった。
美々子が星光に向けて走ってくる。