愛しているので離婚してください~御曹司は政略妻への情欲を鎮められない~
 間もなく日付が変わる。

 今夜も彼は、まだ帰らない。
 もう少しだけ待とうか。それとも、今夜もあきらめようか。

 眠くてぼんやりとする頭を振った。
 癒しのクラシックピアノは気持ちを落ち着ける反面、睡魔も呼ぶから困る。眠くなっている場合ではないのに。

 今日を逃すと明日は金曜日。
 なんとか休日前には終わらせたい。でも朝からする話でもないし。
 困ったわ……。

 ため息をついた時と、ガチャっと玄関で音がしたのは同時だった。

 ようやく彼が帰ってきたらしい。

 ――さて。
 再生ボタンを停止させてソファから立ち上がると、眠気が消えそうになる。厄介ごとを早く済ませてベッドに潜り込もう。

「おかえりなさい」

 彼はちらりと私を振り向いたけれど、無言のままキッチンへ行く。
 ビジネスバッグをテーブルの上に置き、ネクタイを緩めた。

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