愛しているので離婚してください~御曹司は政略妻への情欲を鎮められない~
 私が渡ってきた六m道路の横断歩道の入り口あたりに人だかりが見えて、秘書の透さんの他に数人の男女が人目を遮断するように、中心を取り囲んでいる。

 隙間からうずくまる女性と、「ママッ、ママ!」と泣き叫ぶ美々子が見えた。

「どうして、美々子が」

 偶然とは思えず背筋が凍る。美々子はもしかして私に何かをしようとしたの?

 震える私を包むように抱き寄せて、綾星さんは「心配ない」と囁く。
 と、そこに意外な人が来た。

「お兄さま?」
「飛翔さん……。どうして」

「星光の危機を俺が知らないはずないだろう」

 兄は不敵な笑みを浮かべて綾星さんを見る。
 いつの間にか兄の隣に、氷室さんもいた。

「氷室さんも?」

「美々子が星光をつけ回していたんだ。心配で氷室さんにボディーガードを頼んだんだよ」
綾星さんがそう言った。
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