愛しているので離婚してください~御曹司は政略妻への情欲を鎮められない~
 一口飲んで、大きく納得する。
 なるほど私が選んだチョコレートに合わせてくれたらしい。オランジェットとフルーティーなモカの風味が相乗効果を生み出して、うっとりするほど口に馴染む。

 これからはもう少しまめに来ようかしら、なんて思った。
 持ち帰って食べてもチョコレートの美味しさは変わらないけれど、彼が選んで出してくれるコーヒーはこの場で楽しむに限るもの。

 満足しながらチョコレートが付いたオレンジをひと齧り。
 柑橘系の爽やかな酸味が広がって、ああ至福の時。
 うーん、おいしい!
 興奮のあまりため息が大きくなってしまったらしい。クスッと笑っている彼と目が合った。

「お好きなんですねオランジェット。前回もですよね?」

 私の趣味はひとり旅。綾星さんが出張のときは旅行を楽しんだ。
 この店に来るのは今日で五度目。年に一度か二度しか来られないけれど、必ずオランジェットを買っているのを覚えていてくれたらしい。

「はい、大好きなんです。こちらのオランジェットのピールは、酸味に負けないくらい甘い香りがしますね」

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