愛しているので離婚してください~御曹司は政略妻への情欲を鎮められない~
 もっと表面的な、挨拶を交わす程度のドライな交際だと思っていたが、どうやら違う。
 誘い合って同じ教室に通い、誰かが困っていれば手を差し伸べ、チャリティーにも積極的に参加していたようだ。

『お父さまの名前を出さずに、一般市民としてのボランティアは、学生時代から続けているそうね』

 そう言われても何も知らない俺は、曖昧な笑みを浮かべて頷くばかり。
 隣で綾乃が『私も星光さんに連れて行ってもらいました。とてもいい経験になりました』と答えていた。

『先日星光さんに来ていただいて、インターネットのことを教えて頂いたのよ。さすがよね、GoJのパソコンにもお詳しくて』と、言う高齢の夫人もいた。

 今夜は女性だけの参加も多いせいか、GoJの取引先関係の夫人たちも多い。

 社交的で信頼も厚く、優しい。
 俺の知らない星光がここにもたくさんいた。

 今まで誰も教えてくれなかったじゃないか。

 文句を言える立場ではないが。
 なぜだ。俺はそんなに彼女を見ていなかったのか?

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