愛しているので離婚してください~御曹司は政略妻への情欲を鎮められない~
 彼は視線だけを紙に向ける。

 それは私の欄のサインが済んだ離婚届。

 ボトルをテーブル置き離婚届を手に取った彼は、ゆっくりと視線を私に向ける。

 返事は聞かなくてもわかる。
 彼の冷たい瞳は探すわけないだろう? と口ほどに語っている。

 最後くらいはもう少し、悲しそうにしてくれたらいいのに。予想通りの対応に思わず苦笑が漏れた。

 仮面夫婦とはいえ、私たちは三年も一緒にいたじゃない?

 でもまあ仕方ないですよね。
 あなたは私を愛していない。というよりはむしろ、疎ましかったでしょうから。

「明日、出て行きますね。では、おやすみなさい」

 そして。

「さようなら」

 でもね、私の旦那さま。

 私はあなたを嫌いじゃなかったですよ。

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