愛しているので離婚してください~御曹司は政略妻への情欲を鎮められない~
「追いかけてくるようですが、よろしいんですか?」

「え?」

 振り返ると、手を振りながら走ってくる綾星さんが見えた。

「無視していいです。振り切っちゃってください」
「あ、そうですか、では」

 ぶぅーんとエンジン音が高くなり、ドアミラーの中の綾星さんが小さくなる。

『あなたはたった一度も私に触れるどころか、愛を囁いたことも、誕生日にプレゼントをくれたこともない』

 どうしてあんなことを言ってしまったんだろう。別に誕生日プレゼントが欲しかったわけじゃないのに。

 あれではまるで、愛を囁いて欲しかったと告白したみたいではないか。

 そう思うと、ほんの少しだけ胸が痛んだ。

< 46 / 211 >

この作品をシェア

pagetop