愛しているので離婚してください~御曹司は政略妻への情欲を鎮められない~
「おはようございます。今日は鮭のおにぎりにしてみました」
「ありがとう」
ではスケジュールをと話を進める五月を止めて、聞いてみた。
「ちょっと確認したいんだが、先月妻の誕生日に花を贈るよう君に頼んだよな? 花束の他にも何かプレゼントを添えると」
「ええ。それがどうかしました? ――あっ!」
五月はハッとしたように両手で口元を覆い、目元を歪める。
「もしかして私、頼み忘れたかもしれないです」
やっぱりな。
頭を抱えたくなるが、今は平静を装うしかない。
「そうか、わかった」
「ちょうどあの頃、確か新型ノートパソコンの発表会があったりして。どうしよう……。あの、これから急いで、私、奥さまに直接」
五月が今にも飛び出して行きそうに扉に向かっていく。
「待て、いいから」
慌てて右手を差し出し「いい。気にしないで」と止める。
「大丈夫だから」
「すみません、専務、私……」
「いや、いいんだ。プライベートな頼み事をした俺が悪い。君はあくまでもGoJの秘書なのに申し訳なかった」
そもそも、人任せにして満足している俺が馬鹿だった。
綾乃だって誕生日のことを怒っていた。五月が忘れていなくても、そんなプレゼントで星光が喜ぶわけもない。
贈り物をしたしないの問題じゃないんだろう。
「あと、朝食の用意も今日限りでいいからね」
「えっ! どうしてですか?」