愛しているので離婚してください~御曹司は政略妻への情欲を鎮められない~
「君の厚意に甘え過ぎた。すまなかったね。今後は直接仕事に関することだけを頼むよ」
「そんな。どうせ自分の分も作らなくちゃいけないし、何も」
「ああ、わかってるよ、ありがとう。じゃ、ごめん」
これ以上話はしたくない。
いかにも忙しいといわんばかりに電話の受話器を取ると、五月は泣きそうな顔をしたまま部屋を出て行った。
扉が閉じるのを待って、椅子の背もたれに体を預け、天を仰いだ。
「はぁ……」
星光の誕生日は先月、八月九日だ。
忘れてはいない。
五月に『そろそろ奥さまの誕生日ですよね?』と聞かれて、俺は去年と同じように花束を贈るように頼んだ。
『花束だけじゃ寂しいですよ。ケーキとか、ハンカチ一枚でもいいから添えてあげたらいいのに。お任せくだされば用意しておきますよ』
心羽に言われて、そのまま頼んだ。
頼んだのは覚えているが、その後の記憶がない。
星光の誕生日は、俺は確か出張でいなかった。そのまま忘れていたんだ。
だが去年は? 去年は誰に頼んだ? 去年も五月に頼んだはずではなかったか。でも、おととしは?
『そういうことじゃなく』
「そんな。どうせ自分の分も作らなくちゃいけないし、何も」
「ああ、わかってるよ、ありがとう。じゃ、ごめん」
これ以上話はしたくない。
いかにも忙しいといわんばかりに電話の受話器を取ると、五月は泣きそうな顔をしたまま部屋を出て行った。
扉が閉じるのを待って、椅子の背もたれに体を預け、天を仰いだ。
「はぁ……」
星光の誕生日は先月、八月九日だ。
忘れてはいない。
五月に『そろそろ奥さまの誕生日ですよね?』と聞かれて、俺は去年と同じように花束を贈るように頼んだ。
『花束だけじゃ寂しいですよ。ケーキとか、ハンカチ一枚でもいいから添えてあげたらいいのに。お任せくだされば用意しておきますよ』
心羽に言われて、そのまま頼んだ。
頼んだのは覚えているが、その後の記憶がない。
星光の誕生日は、俺は確か出張でいなかった。そのまま忘れていたんだ。
だが去年は? 去年は誰に頼んだ? 去年も五月に頼んだはずではなかったか。でも、おととしは?
『そういうことじゃなく』