愛しているので離婚してください~御曹司は政略妻への情欲を鎮められない~
もう隠す気力もなかった。
「星光が、家を出て行った」
「あらまぁ。何? もめたわけ?」
「いや、全く。淡々としたものだよ」
あはは、と透が苦笑いを浮かべる。
「でもさ、よかったじゃないか? お前嫌ってたし星光さんのこと。これで晴れて心羽ちゃんと付き合えるじゃん。――ん? じゃなんで心羽ちゃんの朝食断ったの?」
「だから、なんでそうなるんだ。何度も言ってるよな? 五月とは何もない。それに俺が星光を嫌ってたのは、ずっと前の話だ」
「え? そーなの? あ、でもそういえばパーティで見かけるお前たちは、仲良さそうに見えたもんなぁ」
「とにかく俺は離婚する気はない。だから誰にも言うなよ」
「わかったよ」
透は、首を傾げながらも頷いた。
嫌っていたのは、正直言えばずっと前じゃない。
離婚届を渡されたあの時まで、俺は星光を嫌いだったかもしれない。