愛しているので離婚してください~御曹司は政略妻への情欲を鎮められない~
 一族が保有する株式には手を出さずに全て精算し、伯父の逮捕は免れたが当然一族への風当たりは強い。父も俺も子会社へ移ったがそれだけで済んだ。

 花菱が欲しかったのはうちの票と旧財閥系という格式ある五條の名前。五條が欲しかったのは資金援助と政界のボスと言われる花菱の力。利害が一致した。

 そして三年が過ぎ、ここへきてようやく業績が安定してきた。俺も専務としてGoJに戻ることができた。

 ようやく精神的にも落ち着いてきて、これから少しずつ星光との距離を縮めようと思ってたんだ。多分……。

 俺は一度も別れたいなんて思っていない。
 星光だって、一度も不満も言わなかったじゃないか。それをいきなり離婚って。

「はぁ……」

 突然過ぎて、あの時何も言えなかった。

 離婚届を見ても、他人事のようにしか受け入れられなかった。あまりにも意外だったから。
 この一週間何度も電話をしようとしたのに、何をどう言ったらいいかわからなくて。

『寝言は寝ているときに言ってくださいね』
 ああ、そうだよな。
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