愛しているので離婚してください~御曹司は政略妻への情欲を鎮められない~
 そう言われたって仕方ないんだ。俺が百パーセント悪い。

「おいおい。綾星? 大丈夫か?」
「ん?」
 顔を上げると透が心配そうに見つめていた。

「ああ、大丈夫だ。ここんとこ食欲がなくてな」
「ちょっと早いけど出掛けるか? どこかでゆっくり朝食をとろう。中華粥なら食べられるんじゃないか?」

「そうだな」
 心羽のおにぎりは、俺が昼に食べるからという透に渡した。とてもじゃないが口にする気にもなれない。
 詳しく聞けなかったが、星光は多分何かを疑っている。

 万が一、星光が興信所に俺の調査を依頼していたとしても問題はないはずだが、ごくまれにホテル内での会議もあって、五月を伴ったりもした。

 疑われるとしたら五月しかいない。その場合に備えて会社を出た時間と会議録を合わせれば心配はないはずだが、そう思った途端、五月に用意してもらった朝食を食べている自分が、とんでもない悪人に思えてきた。
 実際俺は無神経過ぎた。全てにおいて。

 今更だが……。


< 54 / 211 >

この作品をシェア

pagetop