愛しているので離婚してください~御曹司は政略妻への情欲を鎮められない~
「大丈夫よ。もうね最近はみんなベテランだから私がいなくても困らないの。今日は一緒に泊まれるわ」
「やったー」

 あら、それおいしいそうねと早速料理に興味を見せる母は、ここ京都で『せい亜』というおばんざい屋を経営している。小さい店だけれど人気店で、昼に行った時も予約客だけでいっぱいだった。

 母と父が離婚したのは、私が十歳の頃。

 原因は浮気。最初に浮気をしたのは父だったらしい。悩んだ母は当時の父の秘書を頼っているうちに、その秘書が好きになってしまったという。母いわく、その人との間に何かあったわけではなかったけれど、そんな自分が嫌になって離婚を決意したらしい。

 兄と私を置いていくのが父の離婚の条件だったようだ。その代わり好きな時にいつでも会っていいと言われて母は条件を飲んだ。

 実際私は週末の度に母と会えたし、夏休みなど長期休暇は母と過ごしているので寂しい思いはあまりしていない。

「今夜は、ゆっくり話を聞かせてちょうだいね」
 母は何か言いたげな視線を向ける。

「え?」
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