愛しているので離婚してください~御曹司は政略妻への情欲を鎮められない~
「お父さまから電話があったわよ。星光が来たらよく話を聞いてやってくれってね」

 うっ……。

 現在父も母も独身で、離婚以来ずっと再婚はしていない。父の浮気も一時的なものだったらしく、相手の女性も今は家庭を持っていて幸せに暮らしていると聞く。

 父は京都に来ると必ず母の店に顔を出すらしく、連絡もまめに取り合っているようだ。

 今回の離婚話も筒抜けか。

 不思議な関係の両親を見ているせいか、離婚に対して抵抗はない、と言ったら母に叱られた。

「私は後悔しているわよ。お父さまだってあれでとても反省しているわ」

「でも、お母さんは今とっても楽しいでしょう?」

「それとこれとは別よ。実際はお父さまが助けてくれなければあんなに素敵なお店は持てなかったもの」

「元はと言えばお父さまが悪いんだもの、当然よ」

 手厳しいわねと、母はクスクスと笑う。
「それにね、お父さまは私のために離婚してくださったのよ」

「お母さんのため?」

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