愛しているので離婚してください~御曹司は政略妻への情欲を鎮められない~
「性格の不一致ね。私たちよく知らないで結婚しちゃったから」

 よくある理由だし、あながち嘘じゃない。
 お見合い結婚だもの。うまくいくと思っていたのにやっぱりダメだったというのは、普通にあり得る話だ。

「ねえお母さん。幸せな離婚があってもいいと思わない?」

「ええ?」

「お母さん私ね、もめたくないの。私は結婚によって綾星さんを助けることができた。それだけで結婚の意義はあったし、とっても満足なんだ」

 私が心から明るいせいか、母は困ったように眉をひそめていた。
「幸せな離婚ねぇ」と、首を傾げながら。


 私の結婚は、全てが失敗だったわけじゃない。

 離婚と同時に自由を手に入れた母のように、私は結婚して自由を手に入れた。

 私は旅が好き。
 でも父も兄も心配症なので家族旅行以外のは許してもらえなかった。
 ひとり旅なんてもっての外だったから、日帰りで行けるところしか出掛けられなかった。
 夢はぼっちキャンプ。登山も覚えていつかは百名山も制覇したいけれど、まだ私にはハードルが高い。その前に城めぐりをして、と夢は尽きない。

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