粗大ごみを拾ってしまった(番外編その4)大森VS巫女の恋愛格差問題
<神社裏手・公園>

俺は何もしてやれない・・
それでも・・

「大森様、おかえりなさい。
お疲れさまでした」

「大森様のお好きなコーヒーは
ブラック。深入りで濃いめですよね」

「大森様、やっぱりネクタイは、
緋色が一番お似合いです」

リシェルの笑顔と笑い声、
そして
俺に向ける優しいまなざし。

リシェルの存在は、
仕事には邪魔だと思っていた。

でも、それ以上に・・・

俺の内側で、
美しい色彩と光を放っている。

「私も、大森様に抱きしめてもらいたかった。
そして
キスもしてもらいたかった」

リシェルは、
小さくつぶやくように言った。

大森は唇をかみしめた。

そして・・・・
大森の体が動いた。

縛られているリシェルの側まで
進んだ。

そのままひざまずき、
リシェルを包み込むように
抱きしめた。

一瞬、
リシェルは驚いたように、
大森を見上げた。
が、大森は何も言わなかった。

この想いを伝えるのには・・
言葉はいらない・・・

その片手は
リシェルの頬に触れた。

そして、
その唇に重ねた・・・
静かな、祈りのように、
やさしく、(いつく)しむように

何よりも可愛らしい、
大切な人だから・・

想いを込めた口づけだった。
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