粗大ごみを拾ってしまった(番外編その4)大森VS巫女の恋愛格差問題
<神社裏手・公園>

唇が離れた時
リシェルは少し目を開けて、
微笑んだように見えた。

小さく息を吸うと・・・

安心したように、
大森の胸に顔を寄せた。

それから目を閉じて、
深い眠りに入って行った。

大森は意識のないリシェルを、
抱き続けていた。

リシェルからは春を告げる、
ヒヤシンスの花の香り・・・

<気が付かなかった・・・・>

その香りを忘れないように、
大きく息を吸った。

群青の空に向かい、
リシェルの体から金の粉が
こぼれて上昇していく。

それは数秒で、
泡のようにリシェルの体を包み込み・・・

大森の腕から、
跡形もなく消えさった。

暗闇だけが、腕の中に残った。

大森は顔を(おお)った。

「終わった。帰ろう」
その肩を、瞑王が軽く叩いた。

大森はわかっていた。

自分の体・・
すべてにリシェルの痕跡が
ついている・・・・

唇にも・・・・

「獄界に戻ります・・
もう、できません。
これ以上・・」

大森はひざまずき、
両手を地面につけて、下を向いて言った。

「獄界の私は・・
神殿の巫女を(けが)しました。
これも罪でしょう」

瞑王は腕組みをして、
雲が厚くなっている空を見上げた。

大森は、そのまま地面を見続けていた。

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