【完】鵠ノ夜[上]



「ん?そんなこと言ったっけ?」



「……雪深がいいなら、わたしも構わないけど」



「ん。いいや。

黙ってるより、正直に言ってこうやってお嬢といちゃいちゃしてたいもん」



そう言って見せつけるようにレイちゃんの頰に口づけるゆきちゃん。なんていうか、ほんと勇者だよね。

ぼくそこで悪魔みたいなオーラを出してるこいちゃんに巻き込まれるのやだよ?怒られるのはゆきちゃんだけにしてね?



「レイ。その破廉恥追い出したほうが良いよ」



「……好かれることに対して嫌悪感はないわよ?」



そうなんだけど。そうなんだけど、レイちゃん……!

いまそのタイミングでそういうこと言うと、こいちゃんの不機嫌さが増すから……!ゆきちゃんは自慢げな顔してる場合じゃないよ……!




「ふうん。……まあ今は良いや。

っていうか、ろうそくとけるから早く吹きなよ」



ハッとしてケーキを見ると、たしかにろうそくがかなり溶けてきていた。急かされるように電気が消えると、圧倒的に男の声が多いハッピーバースデーを歌ってもらい。

ふー、と15本のろうそくを吹き消して、ありがとうとお礼を言った。



「おめでとう、芙夏。

学年は違うけれど、これで芙夏も同い年ね」



「……レイちゃんは誕生日来ちゃったじゃんかー」



むう、と頰を膨らませたら、くすくす笑いながら「ごめんね」って言われた。別に怒ってるわけじゃないから良いけど。

夕食にしましょう、という彼女の声で、ケーキは後にして先に夕食。どうやらわざわざこのお祝いのためにだけ組員が駆けつけてくれたらしく、部屋には五家とレイちゃんだけが残った。



「やっぱり片付けせずに帰っちゃうんだから……

もう、散らばらないクラッカーにしてってお願いしたのに」



「ふふ、いいよーレイちゃんー。

ぼくもあとで一緒にお片づけするもんー」



< 101 / 271 >

この作品をシェア

pagetop