【完】鵠ノ夜[上]
レイちゃんがぼくにくれたプレゼントは、ぼくをイメージして選んでくれたらしい浴衣だった。
シンプルでお洒落な花火柄の浴衣。ぼくには大人っぽくない?と聞いたら、「似合う男になって頂戴」と色気のある顔で微笑まれた。
どうやら全員このスタイルでいくようで、みんなの誕生日にも浴衣をプレゼントするらしい。ズレが生じてしまうから、ここに来たとき一番に誕生日だったはりーちゃんの誕生日はお祝いしなかったんだとか。
まあそのとき、はりーちゃんの誕生日を知っていたのがレイちゃんだけだった、っていうのもあるんだけど。
「この浴衣で、夏は花火とか行きたいなぁ」
「え、それずるくねえ?
俺ら誕生日回ってこねえじゃん」
「はは、俺と芙夏とレイで行けば良いよ」
「くっそ胡粋夏生まれか……」
仲良いよねえ。
レイちゃんのことがなければ……いや、レイちゃんのことがあるからここまで仲が良いのか。
「レイは着物も浴衣もいっぱい持ってるよね。
俺らは普段着とか私服も洋服だし、大きい行事で和装はたまにするけど、レイは和装の方が多いじゃん」
「そうだねー。
レイちゃんが洋服着てるのめずらしいもんー」
お休みの日に、誰かと出かける時は洋服だけど。
前にレイちゃんと恋愛映画を観に行った時、彼女が着ていたシフォンのワンピースはゆきちゃんに選んでもらったらしい。
かわいいねって褒めたら、嬉しそうに笑ってくれた。
ちなみにその話をしたら、ゆきちゃんはドヤ顔してた。なんだかんだレイちゃんの好みだとか、色々把握してるんだと思う。ゆきちゃんセンスいいもんね。
「幼い頃から和装が多かったんだもの」
どことなく、拗ねるように言いながら。
ケーキをもぐもぐと頬張っているレイちゃん。
そこのレイちゃん大好きな男ふたり、「あ、かわいい」っていう心の声が表情からだだ漏れだよ。
確かにぼくから見てもかわいいとは思うけど、隠せてないよこいちゃんゆきちゃん。