【完】鵠ノ夜[上]
「あ、」
レイちゃんが小さな声を漏らすと、手を止めてフォークを置いた。
机の上でヴー、と震えたスマホを手に立ち上がると、「ちょっと行ってくるわね」と部屋を出て行く。どうやら電話だったようで、五人になる部屋の中。
「ねえねえー。
サプライズで、レイちゃんのお誕生日お祝いしようよー」
「……そういうのが嫌だから誕生日言わなかったんでしょ?」
「でも、小豆さんとご飯に行くのはいいんでしょー?
ってことは誕生日のお祝いとかじゃなくてー、日頃のお礼としてお祝いすればいいんだよー」
言うなれば、別に誕生日祝いじゃなくてもいいのだ。
ただ彼女にありがとうっていう気持ちを伝えたいだけで。当たり前のようにぼくの誕生日をお祝いする計画を立ててくれたレイちゃんに、お返しをしたいだけで。
だめかな?とみんなの顔を見回せば、最初に「いいんじゃねえの?」と乗ってくれたのはゆきちゃん。
それに続くように、こいちゃんも「いいよ」と言ってくれた。
……まあ、このふたりならそう言ってくれると思ってた。
問題は、彼女と格段仲が良いわけでもなければ、それこそいろんなものに興味のないふたりの方だ。
「はりーちゃんと、シュウくんはー?」
「……別に、どっちでもいい。
お前らがやるって言うなら、止めねえよ」
「……めんどくせー配役にしねーっつうならな。
どうせお前ら、俺が拒んでもやる気だろーが」
その返事を聞いて、自然と笑みが漏れる。
なんだかんだ、シュウくんだってレイちゃんのことを大切にしていると思う。ここに来た時は、女の下に仕えるなんてありえねーって言ってたけど。
何かに反抗するような姿勢を見せたこともなければ、お嬢として彼女から指示されたことに逆らったこともない。
こうやって、ぼくたちにも協力してくれるわけで。
「じゃあ別邸もどったら、
サプライズ計画立てようねー!」
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