【完】鵠ノ夜[上]



「彼等のスケジュールの調整は出来たの?

来月からは、それぞれ稽古の先生についてもらいたいんだけど。実家にいた時とはまた少し違うだろうから、細かい調整もしてもらいたいのよ」



「はい。雨麗様がお決めになられましたスケジュールを出来る限り合わせております。

六月からですので、七月に再度調整を入れます」



「そう。……あと、月に一度は必ず稽古のことで話し合いをしたいからその日もわたしのスケジュールと組み合わせてちょうだい。

それから彼等がどうしても予定を入れたい日については、あなたに話が行くようにしておいて」



「かしこまりました。

雨麗様の稽古状況につきましては、今まで通り変わらずに入れさせていただいても構いませんか?」



「ええ。合同でやると疲れるだろうから、時間の組み合わせもよく考えてあげて。

最終のスケジュール確認はわたしがするから」



わたしの仕事は、何もわたしがやるべき事だけをこなしていればいいわけじゃない。

様々な稽古やプライベートの予定の中で、護衛として各地から預かった若たちの面倒を見るのもわたしの仕事。特に来月から始める予定の各自の稽古は、細かな調整が必要になってくる。



わたしと小豆はそれぞれに仕事もあるが、どちらがこなしても構わない仕事もある。

二人で協力しながら進める仕事もあれば、小豆が他の組員から上がってきている仕事を彼が引き受け、最終的にわたしの確認が必要なものもあったりする。




すなわち、決して楽ではないのだ。

だから五家を集める時、各自息子の仕事を変わって行える人物をこちら側から派遣しようか、という話も出ていたのだが。



どうやら彼等は主な作業に関わっている訳では無いようで、若が抜けても仕事は進むらしい。

御陵の直下であれど仕事は違うのね、と思いながら足を止め、抱えたファイルの一つに挟まれた書面に署名を終えると、それらを小豆に手渡す。



「それじゃあ、わたしは別邸に行くわね。

あなたも、今日の業務お疲れ様」



「お疲れ様です」



生け花の稽古の後、行儀としては良くないが夕飯の最中に彼と書面の確認。

それから今の確認を終えて、雪深と約束していた映画の時間。小豆は長時間側にいるが、毎日遅くまで作業をさせるわけにもいかない。



今日のように早く切り上げられる日は切り上げてもらっているのだ。

おやすみ、と彼に軽く手を振ると、本邸を出てすぐ別邸にたどり着く。インターフォンを鳴らせば笑顔の芙夏が出迎えてくれて、別邸に足を踏み入れる。



「あ、レイちゃんちょっと待ってねー?」



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