【完】鵠ノ夜[上]
「もちろん。……わたしが、ね」
冷たく言い放ったお嬢が、女たちの表情を見回した後。
シャキ、と持ったままだったハサミを静かに動かして。
「この鋭いハサミで睫毛を切られるって恐怖よね」
「れ、レイちゃん……
もうそれぐらいにしておいた方が、」
「そういう甘いこと言ってるからつけ込まれるのよー。
……まあ、今回はとりが首を絞めることを想定した上であなたたちを利用させてもらったから、仕方なくやめておくわ」
「は……?」
首を絞めることを……想定してた?
だから、ああやって落ち着いて、平然として入られたのか。死がすぐそこに迫っていると、知っていたのに。
「……ああ、そうだ。
あなたたちが雇った殺し屋、わたしが買収したの。だからもしはとりが今日首を絞めた件、誰かに話したらあなたたちの元に彼らを送り返すから」
「わ、わかったわよ……」
「大丈夫だとは思うけど念のため病院に行くなら、行ってくれて構わないわよ。
ただし口の固いところにして。……請求書は「御陵」にしておいてくれたらわたしが払うから」
「、」
もう、何も言えないって顔だ。
呼ばなくたってわかるけど、俺らの名前を順番に一人ずつ呼んだ彼女が、「行くわよ」と静かに告げる。
どうすることも出来なくてただそれに着いて外へ出ると、彼女は機材に差し込まれていたSDカードを小豆さんから受け取る。
そのままどうするのかと様子を見ていれば、すぐそこの淵まで歩いて行って、海へとそれを捨てた。
「……データ、捨ててよかったの?」