【完】鵠ノ夜[上]
「天祥の関係に探偵がいたから、俺は個人的にその男にあいつを追い詰めた犯人を捜すように依頼してた。
……あいつが亡くなって、一ヶ月して。その探偵から、犯人がわかったと連絡があった」
「……ええ」
「……捜させたことを後悔したよ」
はとりが、自嘲気味に笑みを見せる。
それから、事前に用意していたらしい写真をわたしに差し出した。情報ファイルにも同じものが挟まれていたから、何度か、わたしも目にしていたそれ。
はとりと、はとりの彼女さんが真ん中にいて。
はとりの右側には男の子がふたり、はとりの彼女さんの左隣には男の子と女の子が一人ずつ。──全員が何の屈託もない、笑顔の写真。
「……犯人は、こいつらだった」
指差されたのは、はとりの右側にいた男の子ふたり。
──その意味を理解して、は、っと。目頭が、熱くなった。
「あなたの彼女さん、は……」
この六人は、いつも一緒の仲良しのメンバーで。
はとりの彼女の左側にいた男女も、またカップルで。それでも男女比だとか恋人関係とかそういうことは考えたことがないほどに、仲良しだった。
「犯人を知って、後悔したわけじゃない。
……俺のためにわざわざ、あいつは黙ったまま自殺したのに。その事実を掘り返したことに、後悔した」
「………」
彼女さんは、はとりが彼らを大事な友だちだと思っていることも、信頼していることもちゃんと知っていた。
……だから最後まで、隠し通したまま自殺した。
「でも……それでも。
自殺なんか、させたくなかった」
犯人を知ったら、きっとはとりが傷ついてしまうから。
信じていた友だちに裏切られたことに、ショックを受けてしまうから。だから、彼女は言えなかった。──命を自ら捨てる、その、瞬間も、ずっと。