【完】鵠ノ夜[上]
「ねーねー!
はやく起きてよ、こいちゃんゆきちゃんシュウくん……!!」
御陵近辺の、何もない静かな朝をランニングして帰宅したあと。
シャワーを浴びて制服まで着たっていうのに、まだ寝てる三人。ちなみに別邸の二階には一室だけ誰の部屋でもない和室があって、たまにそこで三人は夜中まで何をしているのか遊んでいる。
昨日の夜は映画を見ながらゲームをしていたらしい。
散らばっているトランプにため息をついて三人を起こすけど、起きてくれない。顔を覗かせたはりーちゃんも、酷い惨状に苦笑してる。
「雪深、胡粋、柊季。
早く起きねえと車乗せてもらえなくなるぞ」
「そうだよー!
ぼくとはりーちゃんで先にご飯行くよー!?」
「んん……うるさいよ芙夏……」
ぼく悪くないのに……!!
というかこいちゃんは最初の方は寝起き良くなかったっけ!?今まではがんばって早起きしてただけなの!?仲良くなってきたらボロがいっぱい出てきてるけど大丈夫!?
「……芙夏、先行くか」
「そうだねー。もう起こさないよー」
いっそのこと、遅刻しちゃえもう。
心の中で毒づいてはりーちゃんと本邸の部屋に向かえば、「おはよう」と手元にあるパソコンから顔を上げたレイちゃん。朝から忙しそうだ。
「……あの子たちは?」
「起こしたのに起きてくんないのー。
もう遅刻しちゃえー、って置いてきた」
「……仕方ないから起こしてくるわ。
小豆がきたら、すぐ戻るって伝えておいて」
制服を着ているからいつもみたいに和風じゃないのに、些細な言動も彼女がやってみせるだけで、とても色っぽくみえる。
自分を魅せるのが、きっと、とても上手い人。……ぼくたちの飼い主で、ご主人様。