【完】鵠ノ夜[上]







「あああああうううう……どうしよう……」



「芙夏が死んでる……!」



「茲葉くん? どうしたの……?」



学校に着いて早々教室で机に突っ伏して唸っていたら、クラスメイトから心配そうに声を掛けられる。

いつもなら笑顔で会話に混ざるぼくがこうやってたら、やっぱり心配になるらしい。



「ぼくが、余計なこと言っちゃって……

なんていうか、空気最悪になっちゃったから……」



レイちゃんが出ていったあとの空気ったら、それはもうゾッとするほどにピリピリしていて。

おまけに、はりーちゃんが「雨麗の言ってることは正しいからな」と火に油を注ぐようなことを言ったせいで、完全にこいちゃんが機嫌を悪くしてしまった。



ゆきちゃんはゆきちゃんで、振られたことに対して普通に落ち込んでるみたいで。

「大丈夫」って一応笑ってくれたけど無理に作った笑顔だって分かったから痛々しかった。




シュウくんは一言もきいてくれないし、はりーちゃんは普通に話してくれたけど、なんというかその普段通りの言動がこいちゃんをさらに苛立たせてしまうから。

そこに全ての発端であるレイちゃんが加わる高校組の車の中を想像しただけで胃が痛い。



「芙夏が?めずらしくね?

いつも空気読んでんのになー」



「ほんとにどうしよう……」



「喧嘩したんだったら、仲直りするだけでしょー?

本当に仲が良いなら、絶対すぐに仲直りできるって。ねえ?」



「仲直り……してくれるといいけど……」



なんせあのレイちゃんと、なかなかに頑固なこいちゃんなわけだし。

はりーちゃんも巻き込んで、最悪の状況だし。



ようやく仲良くなれたのに、と、気持ちが沈む。

でもやっぱりみんなレイちゃんのことが大好きだから、きっとすぐに仲直りしてくれるはず……、というぼくの読みは、凄まじく甘かった。



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