【完】鵠ノ夜[上]
こいちゃんのはっきりした発言で、小豆さんはほっとしたように「それなら良かったです」と笑みを見せてくれる。
……それより、小豆さんがここにいるってことは。
「レイちゃんもご飯中です……?」
「はい。
お客様が来られてますのでおふたりで」
「ちなみに性別は……」
「茲葉様を除く皆様と同じお歳の男性です」
「俺らを差し置いて別の男と食事なんてお嬢ひどい……
っていうか同い年って、なにそれ友だち?」
「いえ。
初対面ですが、雨麗様の仕事に繋がる方ですので」
俺ら初対面の男に負けたの!?という二人の心の声がダダ漏れで聞こえてくる。
仕事って言われてるのにそう思えるゆきちゃんとこいちゃんは、なんというかさすがとしか言いようがない。
「ああ、どうやら来年皆様と同じ高校に転校されるようですよ。
元々関東に住まわれている方では無いので、今回は偶然こちらに来られたついでに立ち寄られたとか」
「……ついででお嬢に会いにこないでほしいんだけどねえ」
「同感。ついでって何なの」
「ついでのつもりで来たわけじゃなかったんだけど……
きみたちにそう認識されるのも仕方ないかな」
ばっと、突然聞こえた声の方へと顔を向ける。
なぜかさっきまで閉まっていたはずの襖は開けられていて、縁に寄りかかっているのはとてつもなく綺麗な男の人。
ぼくのつたない表現で、申し訳ないけど。
……なにこの、王宮にでも住んでそうな王子様顔の男の人。