【完】鵠ノ夜[上]
「八王子様、
お料理の方は如何でしたでしょうか?」
「とっても美味しかったよ」
「もったいないお言葉、ありがとうございます。
あとで料理長の方に伝えておきますので」
……名字がもう既に王子なんだ。
もう王子ですオーラがぷんぷん漂ってるよね。むしろなんでこの人和室にいんの?ってぐらいに整った洋風顔。
「……ふふ、思った以上に楽しめて良かったわ。
玄関までお見送りするから、小豆もいらっしゃい」
「はい」
レイちゃんに呼ばれた小豆さんが部屋を出て、なぜか動くそぶりを見せない王子に「八王子様?」と声を掛ける。
「うん」と一言返事した彼は、ぼくたちを一度見回してから。
「……きみたちのお姫様、もらっちゃおうかな」
「は? ちょっ、」
「じゃあ、またね。See you again.」
流暢すぎる英語で告げて手を振り、部屋を出ていった王子。
結局何なんだあの人。小豆さんも小豆さんで何もなかったみたいに襖を閉めちゃうし。
「なんなんだあいつ……!」
「まじで転校してこないで欲しいんだけど……」
とにもかくにも、仲直りできてよかった。
……あとは、肝心のレイちゃんだけ、なんだけど。