【完】鵠ノ夜[上]
◇ 透けし水晶、灼熱の夢
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「うあ、あっつ……まじか溶ける……」
「心配しなくても溶けないから平気よ雪深。
和璃たちは先についてるらしいから、」
「雨麗~~っ!おそいよ……!」
耳に届いた声。
顔を上げれば駆け寄ってきた雛乃ちゃんが勢いよく抱きついてきて、なんとか受け止めた。危ない、もう少しで倒れ込むところだった。
「雨麗今日髪上げてるの?かわいい……!
結婚式来てくれてありがとうね、プレゼントでくれた食器もめちゃくちゃ可愛くて愛用してるのありがとう……!あと新婚旅行のハワイ楽しかったからいっぱい話聞いて欲しい……!」
「雛乃ちゃん……
ひとまず落ち着いてほしいし、一回離れてもらってもいいかな……」
「あ、ごめんね!?だいじょうぶ!?
そのワンピースも似合ってるね。かわいい」
本当に雛乃ちゃんとうまく会話するのって至難の技な気がする。
荷物を下ろしていた小豆は「雛乃さん落ち着いてください」と苦笑してるし、みんなは突然のことについていけてないし。
「雛乃、雨麗が困ってるだろ離れてやれ。
櫁、いつも通りに配置してあるから揃ったらすぐに海行けるぞ」
「かむちゃんおはよう。
相変わらずテキパキしてるわね」
「和璃が"クソ暑いのにバーベキューしたくねー"って嘆いてた。
……今日はいつも以上に暑くなるらしいな」
「そうらしいわね。
だいじょうぶ、バーベキューで焼く係は後で駆けつける若い組員たちに任せておくから」
「ん。りょーかい」
ぽんぽんとわたしの頭を撫でて、「雛乃行くぞ」と歩き出すかむちゃん。
それに並んでかむちゃんを見る雛乃ちゃんはとっても幸せそうで安心した。