【完】鵠ノ夜[上]
「レイちゃん、
今のが言ってたお友だち……?」
くいくいとわたしの着ているシースルーカーディガンを引いてくる芙夏に、「そう」と答える。
車の中でざっくり雛乃ちゃんとかむちゃんのことは説明した。憩はやっぱり来れないようだけど、今年は五家も一緒だからさみしくない。
「あず……櫁。
あなたの荷物も運んでおくから貸して」
「すぐに行きますので大丈夫ですよ。
それより雨麗様、皆様と先に海へどうぞ」
「……わかった。
手伝いが必要になったら連絡してちょうだい」
行きましょう、とみんなに声をかけて、海がすぐそこに見える別荘の中へ足を踏み入れる。
今日は。……そう、約束していた夏休みの旅行当日、だ。少し前までテストに追われ課題に追われ仕事に稽古に追われ、の日々だったが、全てはこれのため。
すいすい進んだ別荘の、二階南側。
ちょうど窓から海が見える二室がコネクティングルームになっていて、「ここを使って」と五人に告げた。三人部屋が二つだから、誰がどこを使うかは自由だ。
「レイの部屋は?」
「わたし?
一階の広間近くのゲストルームじゃないかしら。二人用の寝室ならそこが一番広く使えるのよ」
「念のため聞くけど同じ部屋に泊まるのって、」
「雛乃ちゃん。
かむちゃんと和璃と小豆が三人で四人部屋を使うのよ。とりあえず着替えて、海行く準備できたらおりてきて。わたしも着替えてくるから」
のんびりしてたら、大人組が準備を終わらせてしまう気がする。
早く行こうと部屋に向かいさっさと着替えを済ませ、タオルと財布、スマホと日焼け止めをバッグに入れて、部屋を出た。
「……お前ら残念だったな」
着替えを終えて、階段のところで何か話していた五人。
近づけば柊季がそう言うから、どうしたの?と聞いてみたら、どうやらわたしがどんな水着で出てくるのか雪深と胡粋が騒いでいたらしいのだけれど。