【完】鵠ノ夜[上]
「パーカー着てるとか世知辛い」
「……そんなこと言われても。
今は着てるけど、海についたら脱ぐわよ」
前に暴行された時の傷は、なんとか治った。
微かに痣が残りそうで心配していたけれどそれも綺麗に治ったおかげで、何も気にすることなく水着を着れる。
「レイちゃん後でビーチバレーしようよー」
「組員とやってみたら?
スイカ割りとかビーチバレーとかみんな好きだから、きっと参加してくれるわよ」
「レイちゃんはやらないの……?」
「わたしは海でのんびりするのが好きなの」
甘えてくる芙夏の髪を撫でてから、ようやく海に行くと、大人組がもう既に準備を終えてくれていた。一足遅かったみたいだ。
バーベキューの具材は組員たちが買ってきてくれるらしく、それが来たらすぐにでも開始できる。
「みんな任せっきりでごめんね。
準備してくれてありがとう。着替えてきて?」
「日差しが強いですから、
しっかり日焼け止め塗ってくださいね」
「ん、わかってる」
大人数で使える大きなテントの下。
シートの上に腰を下ろして、いそいそ隣に来た雪深に「日焼け止め塗った?」と尋ねる。この日差しじゃ確実に焼けるだろうし、みんなも塗っておいた方がいい。
「顔だけは塗ってきたけど。
あ、そーだ。背中の方はお嬢が塗って?」
「……いいわよ。
自分でするとムラになっちゃうだろうし」