【完】鵠ノ夜[上]
「雨麗……!
あとでSNSにアップしたいから写真いっぱい撮ろー」
「別にいいけど……
雛乃ちゃん、今日いつもより元気ね」
「だっていい男揃いでしょ……?
なにあの、雨麗の護衛たち……思った以上にレベル高くてわたしびっくりしちゃった」
「かむちゃんが嫉妬するわよー。
……ふふ、でもみんなかわいいでしょ」
「みんな雨麗のこと好きで仕方ないって感じ。
随分しっかり手なずけちゃってるじゃない」
「予想以上に時間かかっちゃったし……
よく揉めてるから、完全とは言えないけど、」
さっきまではわたしにべったりだった二人も。
芙夏に触発されたのか、ちゃっかり楽しんでるみたいだし。五人の笑顔を遠巻きに眺めつつ、ほっと息をつく。
「……あんな顔してくれるなら幸せよ」
「あたしには雨麗が近くにいる時の方がみんな幸せそうに笑ってるように見えたけどー?
……憩の存在を知ったら哀しむんじゃない?」
「そう、ね……」
雛乃ちゃんに引きずられながらも持ってきた浮き輪の輪に身体を通して、地面から足を離す。
ゆっくりと揺蕩う中で、この場にそぐわないため息が漏れた。
「わたし……
結局まだ好きなのかどうかよく分からなくて」
「……憩は雨麗にとって特別だったでしょ?
でもまあ、あれは一種の洗脳かも知んないけど」
「すべてを教えてくれた人なんだもの。
物心ついたときから知ってて、そばにいてくれて、気づいたら好きで付き合って、はじめてのこと、たくさん教えてもらったの」