【完】鵠ノ夜[上]



「白い肌に、赤って映えるじゃない?

……ほら。特に雪深は、肌が綺麗だから」



「……あいつらにも同じことしてるくせに」



ようやく、"俺自身"が呼吸を取り戻すみたいに。

文句を口にすれば、くすくすと吐息混じりな笑みが胸元で淡く揺れる。煽られてるのは俺だけで、お嬢にそんな気は微塵もないからタチが悪い。



「なぁに、嫉妬……?」



「嫉妬だって言ったら……どうすんの?」



「まだまだお子様ね」



……ああ、クソ。

この人に言葉でも態度でも勝てるわけがないとわかってはいるけれど、一度で良いから求める以外に選択肢がないほどこの人の熱を上げてみたい。




「……もっとして」



頬に触れたままの彼女の手。

その上から手を重ねて強請ると、甘く細められる瞳。



すべてを丁寧に絡み取るようなキスをされて、背筋がぞわりと粟立つ。

いつの間にか体勢も崩れて、キスだけで、愛でられて。



「こういうのって、誰とでもするもんじゃねえよ」



「あなた達としか、してないじゃない?」



……そうだけどさ。

そもそも俺以外の誰とも、こんなことして欲しくない。



こうやって触れ合えるのは、俺だけがいいのに。

お嬢は薄情にも、俺ら番犬に対して平等に接する。



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